【2026年版】ペネトレーションテストの無料ツールおすすめ10選|用途別比較
サイバー攻撃の手口が高度化する中、企業規模を問わずセキュリティ対策の重要性が高まっています。ペネトレーションテストは、攻撃者の視点からシステムの弱点を洗い出す実践的な手法ですが、専門業者に依頼すると数十万円以上の費用がかかることも珍しくありません。
サイバー攻撃の手口が高度化する中、企業規模を問わずセキュリティ対策の重要性が高まっています。ペネトレーションテストは、攻撃者の視点からシステムの弱点を洗い出す実践的な手法ですが、専門業者に依頼すると数十万円以上の費用がかかることも珍しくありません。しかし実は、予算が限られている中小企業でも活用できる無料のペネトレーションテストツールが数多く存在します。この記事では、用途別におすすめの無料ツール10選を比較し、選定時の注意点や導入のポイントを詳しく解説します。
ペネトレーションテストとは?基礎知識と実施目的
ペネトレーションテストを効果的に実施するには、まずその基本的な概念と目的を理解することが重要です。ここでは、脆弱性診断との違いや中小企業が実施すべき理由について説明します。
ペネトレーションテストの定義と脆弱性診断との違い
ペネトレーションテスト(侵入テスト)とは、実際の攻撃者と同じ手法を使ってシステムやネットワークに侵入を試み、セキュリティ上の弱点を発見する検査手法です。単に脆弱性の有無を確認する脆弱性診断とは異なり、発見した脆弱性を実際に悪用できるかどうかを検証する点が大きな特徴です。
脆弱性診断では「このシステムには古いバージョンのソフトウェアが使われています」という報告にとどまりますが、ペネトレーションテストではその脆弱性を利用して実際にシステムに侵入し、どこまで情報を取得できるかを確認します。IPA(情報処理推進機構)の調査によると、発見された脆弱性のうち実際に悪用可能なものは約30%程度とされており、真に対処すべきリスクを特定できるのがペネトレーションテストの利点です。
中小企業が実施すべき理由
「うちは小さな会社だから狙われないだろう」と考えるのは危険です。IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」では、中小企業を狙ったランサムウェア攻撃や供給網(サプライチェーン)を狙った攻撃が上位にランクインしています。実際、JPCERT/CCの統計では、サイバー攻撃被害の約60%が従業員300人未満の中小企業で発生しているというデータもあります。
中小企業が狙われやすい理由は、大企業に比べてセキュリティ対策が手薄であることが多く、また大企業の取引先として攻撃の足がかりにされるケースが増えているためです。取引先から「セキュリティ対策の実施証明」を求められるケースも増えており、ペネトレーションテストの実施記録は企業の信頼性を示す重要な証拠となります。
テストの主な種類(外部・内部・Web)
ペネトレーションテストは、攻撃の起点や対象によっていくつかの種類に分類されます。自社の環境に合ったテストを選択することが重要です。
- 外部ペネトレーションテスト:インターネットから公開されているWebサイトやサーバーに対して実施。外部の攻撃者からどのように見えるかを検証
- 内部ペネトレーションテスト:社内ネットワークに接続した状態で実施。従業員や内部の攻撃者がどこまでアクセスできるかを確認
- Webアプリケーションテスト:ECサイトや業務システムなどのWebアプリケーションに特化したテスト。SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどの脆弱性を検証
- ワイヤレスネットワークテスト:Wi-Fiなど無線LANのセキュリティを検証。不正アクセスや盗聴の可能性を確認
多くの中小企業では、まず外部ペネトレーションテストとWebアプリケーションテストから始めることをおすすめします。これらは顧客データや機密情報が保管されていることが多く、優先的に保護すべき領域です。
無料ツールを選ぶ前に知っておくべき3つの注意点
無料のペネトレーションテストツールは便利ですが、導入前に理解しておくべき重要な注意点があります。適切な理解なしに使用すると、法的リスクやシステム障害を引き起こす可能性があります。
無料ツールの限界と有償版との違い
無料ツールには機能制限があることを理解しておく必要があります。有償版との主な違いは以下の通りです。
- サポートの有無:無料版ではコミュニティフォーラムでの自己解決が基本。有償版では専門家による技術サポートが受けられる
- 機能制限:無料版ではスキャン速度や同時検査数に制限があることが多い。また最新の脆弱性データベースへのアクセスが遅れる場合も
- レポート機能:無料版では基本的な検出結果のみ。有償版では経営層向けのレポートや改善提案まで含まれる
- 自動化機能:定期的な自動スキャンや結果の比較分析は有償版の機能であることが多い
JPCERT/CCの調査では、無料ツールの誤検知率は有償ツールの約2倍というデータもあります。無料ツールは「セキュリティ対策の第一歩」として活用し、重要なシステムについては専門家による有償のペネトレーションテストの実施を検討することをおすすめします。
実施前に確認すべき法的リスク
ペネトレーションテストツールの使用には、重大な法的リスクが伴います。不正アクセス禁止法により、許可なく他人のシステムにアクセスする行為は犯罪となり、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
必ず守るべきルールは以下の通りです。
- 自社システムのみをテスト対象とする:クラウドサービスやレンタルサーバーの場合、事業者の許可が必要な場合があります
- 書面による許可を取得:社内であっても、システム管理者や経営層からテスト実施の正式な許可を得ること
- テスト範囲を明確に定義:どのシステム・ネットワークが対象かを文書化し、関係者全員で共有
- 外部ネットワークへの影響に注意:取引先のシステムや外部サービスに影響を与えないよう、テスト範囲を厳密に制限
2023年には、セキュリティ研修のために無許可でペネトレーションテストを実施した企業が書類送検された事例も報告されています。善意であっても法律違反となる可能性があるため、必ず適切な手続きを踏んで実施してください。
専門知識が必要なツールと初心者向けの見分け方
ペネトレーションテストツールには、初心者でも使いやすいものから高度な専門知識が必要なものまで幅広く存在します。自社のスキルレベルに合わないツールを選ぶと、正確な診断ができないだけでなく、システム障害を引き起こすリスクもあります。
初心者向けツールの特徴は以下の通りです。
- GUIが用意されている:グラフィカルなインターフェースで操作できる
- 自動スキャン機能が充実:設定項目が少なく、ボタン一つでスキャンが開始できる
- 日本語ドキュメントが豊富:公式ドキュメントや解説記事が日本語で提供されている
- プリセット設定がある:用途別のテンプレートが用意されており、カスタマイズ不要
一方、上級者向けツールはコマンドライン操作が中心で、ネットワークプロトコルやWebアプリケーションの仕組みに関する深い理解が求められます。初めてペネトレーションテストを実施する場合は、OWASP ZAPやOpenVASなど、GUIを備えた初心者向けツールから始めることをおすすめします。
【用途別】おすすめ無料ペネトレーションテストツール10選
ここからは、用途別に厳選した無料ペネトレーションテストツール10選を詳しく紹介します。各ツールの特徴・対象・難易度を理解して、自社に最適なツールを選択してください。
Webアプリケーション診断向け(OWASP ZAP、Burp Suite Community)
**OWASP ZAP(Zed Attack Proxy)**は、OWASP(Open Web Application Security Project)が開発している完全無料のWebアプリケーション脆弱性診断ツールです。世界中のセキュリティ専門家によって開発・メンテナンスされており、初心者から上級者まで幅広く利用されています。
主な機能と特徴は以下の通りです。
- 自動スキャン機能:URLを入力するだけで、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)などの主要な脆弱性を自動検出
- プロキシ機能:ブラウザとWebサーバーの間の通信を傍受・改ざんして、アプリケーションの動作を詳しく分析できる
- 日本語対応:インターフェースとドキュメントが日本語化されており、日本語環境で快適に使用可能
- 拡張性:マーケットプレイスから追加機能をインストールして、診断内容をカスタマイズできる
難易度は初級〜中級で、Webアプリケーションの基本的な知識があれば使い始められます。自社のECサイトや顧客管理システムなどのセキュリティチェックに最適です。
Burp Suite Community Editionは、PortSwigger社が提供するWebアプリケーションセキュリティテストツールの無料版です。有償版のBurp Suite Professionalは業界標準のツールとして広く使われており、その基本機能を無料で利用できます。
- Interceptプロキシ:ブラウザとサーバー間の通信を詳細に確認・編集できる強力なプロキシ機能
- Repeater機能:HTTPリクエストを繰り返し送信して、異なるパラメータでのアプリケーションの挙動を確認
- Scanner機能(制限あり):無料版では手動スキャンのみだが、基本的な脆弱性検出が可能
- 豊富な学習リソース:公式のWebセキュリティアカデミーで、無料で学習しながらツールを習得できる
難易度は中級〜上級で、HTTPプロトコルやWebアプリケーションの仕組みに関する理解が必要です。OWASP ZAPで基礎を学んだ後、より詳細な分析を行いたい場合におすすめです。
ネットワーク脆弱性スキャン向け(Nmap、OpenVAS)
**Nmap(Network Mapper)**は、ネットワーク探索とセキュリティ監査のための最も有名なオープンソースツールです。20年以上の歴史を持ち、映画「マトリックス」などでも使用シーンが登場するほど、業界で広く認知されています。
主な機能は以下の通りです。
- ホスト検出:ネットワーク上でアクティブなデバイスを発見
- ポートスキャン:開いているポート(通信の出入口)を特定し、どのサービスが動作しているかを確認
- OSフィンガープリント:対象システムのOS種類やバージョンを推定
- サービスバージョン検出:動作しているソフトウェアのバージョンを特定し、既知の脆弱性と照合
- スクリプトエンジン(NSE):600以上の検査スクリプトで、詳細な脆弱性診断が可能
難易度は初級〜中級で、基本的なコマンドは比較的簡単に習得できますが、詳細な分析にはTCP/IPネットワークの知識が必要です。社内ネットワークの全体像を把握し、不要なサービスが動作していないかを確認する用途に適しています。
**OpenVAS(Open Vulnerability Assessment System)**は、Greenbone Networks社が開発している総合的な脆弱性スキャンフレームワークです。50,000以上の脆弱性検査テスト(NVT: Network Vulnerability Tests)を搭載しており、企業レベルの包括的なスキャンが無料で実施できます。
- 広範な脆弱性データベース:最新のCVE(Common Vulnerabilities and Exposures)情報に基づいて日々更新
- 自動スケジュールスキャン:定期的な自動スキャンを設定し、継続的な監視が可能
- 詳細なレポート機能:検出された脆弱性を重要度別に分類し、PDF形式でレポート出力
- Webベースの管理画面:ブラウザから操作できるため、専用ソフトのインストール不要
難易度は中級で、初期設定にLinuxの知識が必要ですが、セットアップ後の操作は比較的直感的です。定期的なネットワーク全体の脆弱性チェックに最適で、JPCERT/CCも推奨しているツールの一つです。
パスワードクラック・認証テスト向け(John the Ripper、Hydra)
John the Ripperは、パスワードの強度をテストするための古典的なツールです。1996年の初版リリース以来、継続的に開発が続けられており、パスワードポリシーの妥当性検証に広く使用されています。
主な機能と使用目的は以下の通りです。
- 辞書攻撃:よく使われるパスワードのリストを使って、脆弱なパスワードを特定
- 総当たり攻撃(ブルートフォース):すべての文字の組み合わせを試して、パスワードを解読
- ハイブリッド攻撃:辞書攻撃と総当たり攻撃を組み合わせた効率的な手法
- 多様なハッシュ形式対応:Unix、Windows、MySQL、PDFなど、さまざまな形式のパスワードハッシュに対応
このツールは自社システムのパスワードポリシーが十分に強固かを確認するために使用します。例えば「Password123」のような推測されやすいパスワードを使用しているアカウントがないかをチェックできます。ただし、他人のアカウントに対して無断で使用することは不正アクセス禁止法違反となるため、必ず自社の管理下にあるアカウントのみを対象としてください。
難易度は中級〜上級で、コマンドライン操作と暗号化の基礎知識が必要です。
Hydraは、ネットワークログオン認証のセキュリティテストツールです。SSH、FTP、HTTP、SMTPなど50以上のプロトコルに対応しており、認証システムの堅牢性を検証できます。
- 並列処理:複数の認証試行を同時に実行し、効率的にテスト可能
- 多様なプロトコル対応:Webアプリケーション、メールサーバー、データベースなど幅広い対象をテスト
- カスタム辞書:自社の環境に応じたパスワードリストを作成して使用可能
- GUI版(Hydra-GTK):グラフィカルインターフェースで初心者でも使いやすい
Hydraはブルートフォース攻撃に対する防御策が機能しているかを確認するために使用します。例えば、連続したログイン失敗でアカウントがロックされるか、CAPTCHA認証が適切に機能するかなどをテストできます。
難易度は中級で、対象システムのプロトコルに関する基礎知識が必要です。必ず自社システムに対してのみ使用し、アカウントロックアウトポリシーやIPブロッキングなど、防御機能が正常に動作することを確認する目的で使用してください。
総合ペンテスト環境(Kali Linux、Metasploit Framework)
Kali Linuxは、ペネトレーションテスト専用に設計されたLinuxディストリビューションです。Offensive Security社が開発・メンテナンスしており、600以上のセキュリティツールがプリインストールされています。
主な特徴は以下の通りです。
- 包括的なツールセット:情報収集、脆弱性分析、攻撃実行、事後分析まで、ペネトレーションテストの全工程をカバー
- 定期的な更新:最新のセキュリティツールと脆弱性情報が常に反映される
- 豊富な学習リソース:公式ドキュメントやトレーニングコースが充実
- 柔軟な導入方法:物理マシンへのインストール、仮想マシン、USBブート、クラウド環境など、さまざまな方法で利用可能
- カスタマイズ性:自社の診断要件に合わせてツールセットを追加・削除できる
難易度は中級〜上級で、Linuxの基本操作とネットワーク・セキュリティの知識が必要です。本格的なペネトレーションテストを実施したい企業にとって、Kali Linuxは業界標準の環境として広く認知されています。初めて使用する場合は、仮想マシン環境で試用することをおすすめします。
Metasploit Frameworkは、世界で最も使用されているペネトレーションテストフレームワークです。Rapid7社が開発しており、**2,000以上のエクスプロイト(脆弱性攻撃コード)**を搭載しています。
- エクスプロイトデータベース:既知の脆弱性を実際に攻撃して、システムの防御状況を確認
- ペイロード生成:テスト用の攻撃コードを生成し、侵入後のシステム制御を検証
- 自動化機能:複数の脆弱性を連続してテストする自動化スクリプトの作成が可能
- Webインターフェース:Community版ではコマンドラインが中心だが、Pro版ではWeb UIが利用可能
- 継続的な更新:新しい脆弱性が発見されると、迅速にエクスプロイトが追加される
Metasploit Frameworkは上級者向けで、セキュリティの専門知識が必要です。脆弱性の存在を確認するだけでなく、実際に悪用された場合の影響範囲を検証できるため、リスク評価に役立ちます。ただし、強力なツールであるがゆえに、使用には細心の注意が必要です。必ずテスト環境または明確な許可を得たシステムでのみ使用してください。
ワイヤレスセキュリティ診断向け(Aircrack-ng、Wireshark)
Aircrack-ngは、無線LANのセキュリティテストに特化したツールスイートです。Wi-Fiネットワークの暗号化強度や認証メカニズムの脆弱性を検証できます。
主な機能は以下の通りです。
- パケットキャプチャ:無線LANの通信内容を傍受・記録
- WEP/WPA/WPA2クラック:暗号化されたWi-Fi通信を解析し、パスワード強度を検証
- 偽アクセスポイント検出:不正に設置されたアクセスポイントを発見
- 攻撃シミュレーション:認証解除攻撃など、実際の攻撃手法を再現
Aircrack-ngは自社のWi-Fiネットワークが適切に保護されているかを確認するために使用します。例えば、古いWEP暗号化方式を使っていないか、WPA2のパスワードが十分に複雑かなどをテストできます。
難易度は中級〜上級で、無線LANプロトコルの知識と専用の無線LANアダプタが必要です。また、他人のWi-Fiネットワークを無断でテストすることは電波法違反および不正アクセス禁止法違反となるため、必ず自社のネットワークのみを対象としてください。
Wiresharkは、ネットワークプロトコル解析ツールの定番です。厳密にはペネトレーションテストツールではありませんが、ネットワーク通信の詳細な分析に不可欠なツールとして、セキュリティ診断の現場で広く使用されています。
- リアルタイムキャプチャ:ネットワーク上を流れるすべてのパケットをリアルタイムで表示
- プロトコル解析:HTTP、DNS、TCP/IPなど、数百のプロトコルを自動解析
- フィルタ機能:特定の通信のみを抽出して詳細に分析
- 統計機能:通信量、接続先、プロトコル分布などを視覚的に表示
- クロスプラットフォーム:Windows、macOS、Linuxで動作
Wiresharkは、暗号化されていない通信がないか、機密情報が平文で送信されていないかを確認するために使用します。例えば、HTTPSではなくHTTPで顧客情報を送信していないか、社内システムで古い暗号化プロトコル(SSL2.0、SSL3.0など)を使用していないかなどをチェックできます。
難易度は中級で、ネットワークプロトコルの基礎知識が必要ですが、GUIが直感的で初心者でも基本的な使い方は習得しやすいです。ペネトレーションテストの結果を詳細に分析する際に、Wiresharkは非常に有用なツールです。
ツール選定・導入時のよくある失敗と対策
無料ツールを導入する際、多くの企業が陥りがちな失敗パターンがあります。ここでは代表的な失敗事例と、それを避けるための対策を紹介します。
自社環境に合わないツールを選んでしまう
「有名なツールだから」「無料で高機能だから」という理由だけでツールを選ぶと、実際には使いこなせずに終わってしまうケースが多くあります。
よくある失敗例は以下の通りです。
- Windowsサーバーしかないのに、Linux専用ツールを選んでしまう
- Webアプリケーションを診断したいのに、ネットワークスキャンツールを選んでしまう
- 初心者なのに、コマンドライン専用の上級者向けツールから始めてしまう
- 社内にセキュリティ専門家がいないのに、サポートのないツールを選んでしまう
対策としては、ツール選定前に以下の項目を明確にすることが重要です。
- 診断対象の明確化:Webアプリケーション、ネットワーク、無線LANなど、何を診断したいのか
- 自社の技術レベルの評価:Linux操作、ネットワーク知識、セキュリティ知識のレベルを正直に評価
- 利用可能な環境の確認:OSの種類、ネットワーク構成、必要なハードウェアの有無
- 実施頻度と目的:定期的な監視が必要か、一時的な診断で十分か
まずはOWASP ZAPやOpenVASなど、GUIを備えた初心者向けツールから始めることをおすすめします。基礎的なスキルを習得した後、より高度なツールに移行していくのが効果的です。
テスト結果の誤検知・見逃しに気づかない
無料ツールには誤検知(False Positive:実際には問題ないのに脆弱性と判定)や見逃し(False Negative:実際には脆弱性があるのに検出できない)が一定の割合で発生します。これを理解せずにツールの結果を鵜呑みにすると、重大なリスクを見逃したり、不必要な対策に時間を費やしたりすることになります。
誤検知の例としては、以下のようなケースがあります。
- 正常な管理機能をバックドアと誤判定:リモート管理ツールを不正なアクセス経路と判断
- 既に対策済みの脆弱性を検出:システムは最新だが、バナー情報が古いため誤検知
- カスタム実装を標準的な脆弱性と誤認:独自のセキュリティ機能を脆弱性と判断
見逃しの例としては、以下のようなケースがあります。
- ビジネスロジックの脆弱性:ツールでは検出できない、業務フロー特有の問題
- 認証後の脆弱性:ログインが必要な領域の脆弱性は自動スキャンでは検出困難
- ゼロデイ脆弱性:まだ公開されていない最新の脆弱性は、無料ツールのデータベースに含まれていない
対策としては、以下のアプローチが有効です。
- 複数のツールを併用する:異なるツールで診断し、結果を照合することで精度を向上
- 手動検証を併用する:ツールが検出した脆弱性を、実際に手動で確認する
- 定期的な再スキャン:システム変更後や新しい脆弱性情報が公開された後に再度診断
- 専門家のレビュー:年に一度は、セキュリティ専門家による有償のペネトレーションテストを実施
JPCERT/CCの調査では、無料ツールのみに頼った診断では、実際の脆弱性の約40%が見逃されるというデータもあります。無料ツールは「スクリーニング」と位置づけ、重要なシステムについては専門家による精密検査を併用することが推奨されます。
無料だからと無計画に実施してシステム障害
「無料だから気軽に試してみよう」という考えで、十分な準備なくペネトレーションテストを実施すると、予期せぬシステム障害を引き起こすリスクがあります。
実際に発生した障害事例としては、以下のようなものがあります。
- 本番環境で大量のスキャンを実行し、サーバーが高負荷でダウン:顧客サービスが数時間停止
- 脆弱性検証中に実際に攻撃が成功し、データベースが破損:バックアップからの復旧に丸一日かかる
- 誤って外部サービスへのスキャンを実行し、不正アクセスと誤認される:取引先から信頼を失う
- 無線LANテスト中に、正規ユーザーの接続が切断される:業務が一時停止
これらを避けるためには、以下の手順を踏むことが重要です。
- テスト計画書の作成:実施日時、対象範囲、使用ツール、責任者、緊急連絡先を明記
- 関係者への事前通知:システム管理者、経営層、場合によっては顧客にもテスト実施を通知
- テスト環境の準備:可能な限り本番環境と同じ構成のテスト環境を用意し、まずそこで実施
- バックアップの取得:万が一の障害に備え、必ず最新のバックアップを取得してから実施
- 段階的な実施:いきなり全システムをスキャンせず、小規模な範囲から始めて徐々に拡大
- 営業時間外の実施:万が一の障害が業務に影響しないよう、夜間や休日に実施
- ロールバック計画:問題が発生した場合の切り戻し手順を事前に準備
また、スキャン強度の調整も重要です。多くのツールには「軽度」「中程度」「徹底的」などのスキャンレベルが設定できます。最初は軽度のスキャンから始め、システムへの影響を確認しながら徐々に強度を上げていくことをおすすめします。
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」でも、ペネトレーションテストは綿密な計画のもとで実施すべきと明記されています。無料ツールであっても、その影響力を軽視せず、適切な準備と手順を踏んで実施することが重要です。
まとめ
この記事では、ペネトレーションテストの基礎知識から、用途別におすすめの無料ツール10選、そして選定・導入時の注意点まで詳しく解説しました。重要なポイントを改めて整理します。
- 無料ツールは有用だが万能ではない:予算が限られている中小企業でも活用できる優れた無料ツールは多数存在しますが、機能制限や誤検知のリスクがあることを理解し、有償版や専門家によるサービスとの違いを認識しておくことが重要です
- 自社の用途とスキルレベルに合ったツール選定が成功の鍵:OWASP ZAPやOpenVASのような初心者向けGUIツールから始め、スキルの向上に応じてより高度なツールに移行していくアプローチが効果的です。Webアプリケーション診断、ネットワークスキャン、無線LANテストなど、目的に応じて適切なツールを選択してください
- 法的リスクと技術的リスクへの対策が必須:不正アクセス禁止法違反とならないよう、必ず自社システムに対してのみ正式な許可を得て実施すること、また予期せぬシステム障害を防ぐため、テスト計画書の作成、バックアップの取得、段階的な実施などの準備を徹底することが不可欠です
無料ツールによるペネトレーションテストは、セキュリティ対策の第一歩として非常に有効ですが、完全なセキュリティを保証するものではありません。IPAが発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも指摘されているように、サイバー攻撃の手口は日々進化しています。重要なシステムや機密情報を扱う場合は、年に一度は専門のセキュリティ企業による有償のペネトレーションテストサービスを検討することをおすすめします。
次のステップとしては、まず自社のセキュリティ現状を把握するため、OWASP ZAPやOpenVASなど初心者向けツールで基本的なスキャンを実施してみてください。そして検出された脆弱性への対応と、継続的なセキュリティ監視の体制を整えていくことが、企業の信頼性向上と事業継続に繋がります。
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